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SESにおける協業とは?
SESとは、「システムエンジニアリングサービス」の略であり、ソフトウェアやシステム開発の開発から保守・運用などの業務の現場に、エンジニア(人的資源)を提供する技術支援サービス、エンジニアを提供することによって対価を得る契約形態のことである。
現在、急速に成長するIT業界において、慢性的に人手不足の状態が続いており、ベンダーがクライアント企業へエンジニアを提供する際、自社のエンジニアだけではまかなえないケースが多い。
そんなときは、同じようにエンジニアをかかえている同業他社、またはフリーランスのエンジニアへと依頼し、企業同士が協力し合って、プロジェクトを共有したり、相互にエンジニアを交換し合うケースが多々見られる。
SESの業界は、こうした「協業」で成立していると言えるのが現状である。
SESの協業相手の探し方
エンジニアにもそれぞれ得意分野があり、そうした特色のあるエンジニアをリソースに持つ同業他社との関係性を円滑なものにしておくことは、お互いの企業にとって有効な手段である。
では、そうした“協業したい”SES企業とどのような連携をとっていけば良いのだろうか。
そもそも、そのような協業相手をどのように見つければよいのか。
まずは、SES企業を検索サイトで直接、協業相手を探す方法をはじめとして、SNSを利用して探したり、クライアントから過去に提供された企業を紹介される、といったケースがある。
とはいえ、SES企業も大小あり、最適な協業相手を見極める必要がある。
そんな場合は下記の事項を注意することで、リスクヘッジにもつながるだろう。
●新卒や未経験者中心でなく、中途経験者のエンジニア採用に成功して伸びている企業を選ぶ
●人間力教育の仕組みにきちんと投資がされている企業を選ぶ
●営業力が高い企業を選ぶ
●人事評価制度が明確である企業を選ぶ
●40代以上のITエンジニアが多く活躍している企業を選ぶ
SESでの協業を始めるには
協業相手と一緒にクライアントからの業務を進行していく準備段階で、基本的な契約書やNDA(秘密保持契約)を締結させ、クライアント別の個別契約書(注文書・注文請書)も交わす必要がある。
さらに、プロジェクトが具体的になっている場合は、
●プロジェクトの概要
●プロジェクトの期間
●開発するシステムの概要
●必要なエンジニアの数
●求めるスキル(プログラミング言語など)
●求めるエンジニアの人物像
など、協業相手と十分に協議し、情報共有しておく必要がある。
どういったシステムを作り、それをいつまでに実装したいのかを細かく擦り合わせるのである。
どのプログラミング言語を使うかによって、どのエンジニアが必要なのかも変わってくるため、互いが最適な人材を提供し合えるような関係性を保つべきである。
また、エンジニア個人との相性というのも重要な要素であり、どういった性格で、クライアント先の業種についてどれくらい知見がある人材なのか、こちらも共有しておく必要がある。
そうすることで、協業企業同士でも進行がスムーズに行えるようになり、ひいてはクライアントからの信用に繋がるだろう。
参画後は勤務表なども共有し、最終的な請求書を出すところまで十分に気を配る必要がある。
SES協業トラブルパターン
SES企業同士が協業する際、IT業界特有のトラブルも多い。
1つは現場での指揮命令権の所在が不明確になる点である。
SES契約を結んだは良いが、(通常ベンダー側が持つべき)指揮命令権が現場ではクライアント側にあったなどというケースが少なくない。
これは立派な違反行為となるのだが、指揮命令権というのは所在が証拠として残りづらく、明るみに出ないという難点があるのだ。
特にSESにおいては、派遣契約とSES契約の、どちらを結んでも働き方が同じに見えるため、違法行為が起こりやすい。
現場が混乱しないためにも、こうした細かい状況把握を協業企業同士で共有しておくことが不可欠である。
IT業界はゼネコンと似たような商流で、様々な企業からエンジニアが集まりプロジェクトを進めていく流れとなっている。
クライアントとベンダーが派遣契約を結んだ場合、そのベンダーを通して協業相手の社員がクライアント先に派遣されることは、二重派遣で違法行為となるので、この点も十分注意すべき点だ。
クライアントとベンダーがSES契約を結んでいる場合は、書面上は違法行為とはならないものの、SES契約を結んでいても指揮命令がクライアントからある場合は、派遣契約と同じで、実態は違法行為となるのだ。
このように書面上と実際に起きている事象に差異が起きているのが現状である。
では、そうした違反が起こりやすいにも関わらず、なぜSESはなくならないのか。
それは、SESがクライアント側やベンダー側にとって、とてもメリットのあるビジネスモデルだというIT業界の構造的な特色がある。
IT業界は、急速に成長しているために、常に人手不足の状態が続いており、クライアント企業は正社員として必要な時に必要なノウハウを持ったエンジニアを雇用する事が難しい現状がある。
さらに技術も日々進歩しているため、IT技術を扱う事を本業としていないクライアント企業は、エンジニアの育成には限界があるのだ。
さらに、システムを構築する際、大勢のエンジニアが必要となるも、完成後は一部のエンジニアで事が足りてしまうため、正社員として無期限で雇用し続ける必要がないのである。
このようなクライアント側の都合から、必要な時に必要な技術を持ったエンジニアの技術力を一定期間だけ借りることができるSESはメリットが大きいのである。
また、SES企業の協業での売上げのデメリットとして、「金額が少なくなること」ということも挙げられる。
クライアントから支払われた報酬は、「紹介企業」が営業手数料を中抜きするため、単純に売り上げが少なくなるというわけだ。
70%から80%程度の原価は、ほとんどが人件費となるため、自社でコスト削減が必要となった場合、まずは削減するのは人件費である。
しかし、給料を下げたらエンジニアが辞めてしまい、エンジニアが辞めてしまえば、当然、売上げに直撃して、利益が下がるという悪循環が生まれる。
人材を増やせば、それだけコストがかかり、さらに派遣されるエンジニアの質に差が出てしまうと、契約期間中にプロジェクトが終わらない、というトラブルにも発展してしまう恐れがある。
この他、商流が偽装されていたり、エンジニアの勤怠不良や、業務上での不具合やデータ消失・流出などの事故が起きた際に営業と連絡が取れない、状況確認の時間がかかり過ぎるといったケースもあり、取引が中止にならないためにも、人材の見極めは重要になってくる。
SESで協業を上手く進めるには
IT業界と言っても、結局は「人間同士のつながり」である。
そのため、日ごろから協業相手と連絡を小まめにとり、先方の営業担当者と実際に会い、十分な関係性を築くことが必要である。
「クライアント」「プロジェクト」「エンジニア」それぞれがかかえている問題を把握し、協業企業同士でその情報を共有しておくことが、結果、互いにとっての命綱となるのだ。
また、協業相手だけでなく、エンジニアとも適宜連絡を取り、仕事で困っている点や今後の希望をヒアリングすることも重要。
顧客により満足してもらい、エンジニアも気持ち良く働けるようサポートするのもSES営業の仕事と言える。
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