SESとは準委任という業務委託契約でエンジニアの労働を提供する、そんな業態ですが、そこにおいてとても重要なものに「スキルシート」というものがあります(略してSSと呼ばれたりもします。スクリーンショットじゃないよ)。
目次
スキルシートとは?
まぁ言ってしまえば、職務経歴書です。
しかしエンジニアは特殊な仕事ですから、職務経歴書もまた特殊になります。
一般的な職務経歴書と何が最も違うかといえば、それはやはり「実際に何をやったのか」の部分です。
例えば陶芸家であれば「ろくろで成形しました」とか「窯で焼きました」とかだけだと、まるで陶芸教室で1回体験しただけかな?となるじゃないですか。
それを「粘土はもぐさ土で、釉薬は長石と木灰の灰立て、焼成は還元雰囲気で」とかあれば、なるほどこの人はプロだな、って思いますよね?
え?例えがサッパリ分からない?
いずれにしても、過去の仕事ぶりというのは(文面上であっても)それなりに熱く語れないと、相手にも伝わらないわけです。
私はッ!前の現場ではッ!Javaをっ!ウオオオオオオリャアアアアアと10万行書きましたァァァァァァァッ!!!!!
・・・お気付きだとは思いますが、熱さとは、こういう感じではありません。
エンジニアの方ならお分かりいただけるかもしれませんが、それぞれの方の自負、こだわり、そういった意味合いです。
もうちょっと分かりやすい言い方をすれば「どれくらい具体的であるか」という事なのです。
「Javaで開発をしました」と書いてあっても、じゃあ果たしてその人は実際に何をやったのか、レベルはどのくらいなのか、今ある案件にマッチするのかしないのか。
それを判別するのは、困難を極めます。
「面接で直接話すなら、それでいいだろう」という意見もあります。
もし希望するのが誰でも出来るような仕事で、つまりそのくらいの報酬しか出ず、誰もできればやりたくないような仕事であれば、それでもいいかもしれません。
しかし、それなりにしっかりした待遇と報酬があるような良い案件は、必ず、誰かと競う形になります。
その為に最初に使われるのは間違いなくスキルシートであり、どれほど素晴らしい能力を持った人であったとしても、スキルシートからそれを読み取る事ができなければ、知り合い以外の仕事には就けないのです。
スキルシートを見る人は?ターゲットは?
スキルシートに触れる人たちの中で、最も重要なのは、実際に開発案件に人をアサインする権限のある人です。
場合によっては現場のエンジニアリーダーの事もありますし、非エンジニアの業務側マネージャーの事もあります。
そしてSES業界の場合はこれだけではなく、ビジネスパートナーを経由した案件の場合、このビジネスパートナーも見ます。
いずれにせよ1人だけが見るということはありませんし、見る側も営業であったりエンジニアであったりマネージャーであったりと、まちまちです。
ですから、特定の人にだけ分かればいい、というのは違います。
「印籠に三つ葉葵の御紋が書いてあるスキルシートであればどこでも通る」などあれば良いのですが、そんなものはありません。
いやあったら私も即座にこんなものを書くのをやめてそれが欲しいくらいですが、世の中そんなに甘くありません。
でもちょっとやってみようかな、スキルシートに三つ葉葵。
具体的にスキルシートには何が求められるのか
1つは「精度」です。
言語だけでなく、バージョンは何か。
ツールも何を使って、バージョンは何なのか。
こういった具体的なものがきちんと書いてあると、情報の精度が上がる上に「きちんとしている」といった印象まで与えられるのです。とてもプラスが大きいです。
もう1つ大事なことは「鮮度」です。
どれほど素晴らしい仕事であっても、10年前20年前のものになれば、「今はどのくらいできるのだろう?」となります。
ITの世界は特に進化が著しく速いですから、かつての成功論が現在では通用しない事も多々あります。
そういう意味では力を入れるべきは最も直近に取り組んだ事であり、古いものはそれほど力を入れなくて構いません。
そしてもう1つ重要なことは、「自分の強みがどこか知る」ということです。
過去とても良い仕事、あるいは中心的な役割を果たした仕事があったならば、そこに大きく割きましょう。
逆に意図せず自分らしくない仕事をしたなどある場合は、そこまで無理して盛る必要はありません。
これはエンジニアのスキルシートだけに限らず全般的な事ですが、あれもこれもとやけに膨らませすぎれば、見る側からすぐに分かってしまいます。
スキルシート(職務経歴書)を見る立場にある人は、かなり多くの枚数を見ています。それだけに、付け焼刃で盛ったものなど、軽くお見通しなのです。
ですから、得意じゃないものを無理して得意と言うよりは、自分の本当に得意なものを重点的に書きましょう。
余談ですが筆者はなんでも得意とするのが持ち味なのですが、採用担当者からはまず間違いなく「何も得意じゃない人」と見られます。仮に本当にありとあらゆる事ができたとしても、「なんでもできます!」と答えると「何もできない人」に見られるのが、これはもう世の常なのです(血の涙)
ちなみに座右の銘は「器用貧乏」です。
貧乏じゃなくなりたいなら、強みをどんどん押し出しましょう!
目の色を輝かせるのです!金色に!きんいろじゃないよ、かねいろだよ!(\_\)/
本人・読む人にあわせた、それぞれのスキルシート
えてしてこういったハウツー記事では「こうすればよい!!」と断言されていたりしますが、最も的確で効果的なことは「あなた自身にとって、あなたの採用活動に最適なスキルシートを作り上げること」なのです。
例えば経歴がとても長く、記載するプロジェクトがたくさんある場合、全てをみっちり書いてしまえば、逆に読みにくくなってしまいます。
その場合、最新のプロジェクトであったり、技術的に着目すべきところがあるようなプロジェクトを重点的に書いて、他のプロジェクトはあっさりと記述しちゃいましょう。
逆に書く経歴があまり無い場合。
当然それなりに力を入れて書かねばなりませんが、注意しなければならないのは、典型的な「盛り所」は、見る側も熟知している、という点です。
特に、エンジニアリングとあまりにも関係ない職歴の仕事内容を、そこで実際に発揮した力以上に盛ろうとすることは、逆効果に感じます。
これは時間の都合もあってなかなか簡単ではないかもしれませんが、どうしても書けるような参画プロジェクトが無い場合、「自分自身の趣味のプロジェクトを書いてしまえば良い」と個人的には思います。
そういう例も何度か見たことがありますが、実際に職歴が無い以上は、無いものは書けません。あるように書いても嘘になりかねません。
ところが、歴が無いと仕事に就けないのであれば、いつまでも歴が増えていかないわけです。
こういう時に、もう自分の趣味の部分を、プロジェクト化してしまいましょう。
ポイントになるのは、どんな技術を使ったのか、どんなツールを使ったのか、そういった事をしっかり書いていくことです。
これによって、たとえ仕事として書けるプロジェクトが無くても、それに準じた見方をしてもらえます。
逆になんらかの学校であったり研修であったりの部分は、ただの座学に見られがちです。ここはとてもよくある盛りがちな経歴の1つなので、どれほど頑張ったところで、他の人とはあまり差がついていない、むしろ経歴がしっかりした人との差を浮き彫りにしてしまいます。
そうなるよりは、趣味を1プロジェクトとして記載してしまったほうがいいように思います。
もちろん、そういったことも踏まえて研修などをプロジェクトとしてしっかりやっている会社などは立派に経歴になりますから、そういったことをしている会社は良い会社だと思います。
スキルシートは誰が編集すべきか
これはもうとにかくエンジニアの方本人に編集していただきたい、その一択だと思います。
SES企業では、営業担当者が編集している事もありますし、エンジニア本人も「それは自分の仕事ではない」と感じている場合もあります。
しかしスキルシートとは職務経歴書ですから、いまどの会社に所属しているにしても、その会社に関係なくエンジニアの方個人に紐付くものなのです。
そして、スキルシートに必要な大事な情報も、エンジニアの方でなければ知りえないことが多いのです。
どうしても時間が無いその他で営業担当者などが書く場合、特に漏れがちになるバージョンに関しては、よく確認するようにしてください。
そしてできればエンジニアの方は、どれほど興味が無くとも、ご自身のスキルシートを毎回必ずもらってください。それが、キャリアを築いていくということとイコールになります。
現状では、SESでは会社を移ればスキルシートのフォーマットも違う・・・という事が起こりえます。
せっかく書いたスキルシートもまた1から書き直しでは、自分でやる気がしなくなる、というのも分かります。
ですからここは、業界全体がなるべく統一されたフォーマットのスキルシートを使うべき、でもあります。
書く人にとって書きやすく、見る人にとって見やすく、同じことを何度も書かなくて済むような、統一のスキルシートフォーマット。
エンジニアの方や業界全体を考えた時に、「スキルシート」というものの重要性はもっと重く受け止め、そしてより良く改善していかねばならないと思うのです。
(※編集部注:本コラムは執筆者の個人の考えによるものです。当サイト・運営会社の見解ではありませんので、予めご了承ください。)
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