①SESってつまり何?
【SESの言葉の意味】
SESとは「System Engineering Service」の頭文字をとったもので、
ソフトウェアやシステム開発の開発から、保守・運用などの業務の現場に、エンジニアを派遣するような形での技術支援サービスであり、エンジニアを提供することで対価を得る契約形態のことである。
【SES・SES契約とは準委任契約のことを指す】
基本的にエンジニアが所属する企業と、SESを利用するクライアント企業は「準委任契約」を締結するが、エンジニアの労務管理を行う権限は所属企業にあり、クライアント企業には出退勤管理を行う権限や業務の指揮権などはない。
とはいえ、SES契約を結んだとしても、エンジニアは顧客側の開発現場に常駐ないしリモートにて参画するわけで、現場の指揮命令は顧客側クライアント企業が行いがちとなる。
しかし、業務を進める上での指揮命令は所属企業が行う契約のため、指揮命令を顧客側の者が行ってしまえば、違反行為となってしまう。
SES契約にはこうした矛盾が発生するのだ。
実際の業務における指揮命令権というのはなかなか文書などに残るものでもないため尚更、それをいいことに実態は不法となることを平然と行っていたりと、問題ある現場も存在するのが現状である。
【SES契約と派遣契約の違いは?】
SES契約が「派遣契約」と同じと思われている方も多くいるが、実はこの2つはまったく異なる契約形態なのである。
まず、SES契約と派遣契約の大きな違いは「指揮命令権」。
前述のとおり、エンジニアを提供する企業であるSESには、業務を指示する指揮命令権があり、そのため、クライアントは業務や勤怠に関する命令を行うことができない。
一方、派遣社員の場合は、業務に関する命令を行う指揮命令権がクライアント企業にあるため、業務や残業などの指示はクライアント企業が行う。
この場合、SESは人材を提供しているだけという位置づけである。
派遣には「一般派遣」と「特定派遣」があり、一般派遣は派遣登録をしている労働者を実際に開発現場が存在する企業に派遣する形態(登録型派遣)。
特定派遣は、社員として採用してる労働者を実際に開発現場が存在する企業へ派遣する形態(常用型派遣)であり、SESにおいては特定派遣を行う企業が多い。
とはいえ、平成30年10月以降は労働者派遣法の改定により、特定派遣のみを行うことができなくなり、特定派遣を行う場合は、一般派遣事業許可も取得していなければならなくなった。
【SES契約と請負契約の違いは?】
SES契約と「請負契約」の違いはエンジニアの所属企業と顧客企業が何を義務として契約するかによる。
SES契約は、契約で定める期間に技術を提供することを義務としているが、請負契約は、契約で定められた期日までに成果物を提出することを義務としている。
つまり、SES契約は成果物に対して責任(瑕疵担保責任という)を持たず、請負契約は成果物に対して瑕疵担保責任を持つという契約なのである。
【SES契約と業務委託契約の違いは?】
業務委託契約というのは、「派遣契約」「請負契約」「委任契約」の総称である。
準委任契約(SES契約)は、法律の関わらない業務全般を委託する際に結ぶ契約なので、委任契約の一部にあたる。
派遣契約を結ぶと、指揮命令権はクライアント企業に移るが、SES契約においては、指揮命令権の所在はエンジニア所属企業にある。
②SESでエンジニアが働くメリットとは?
【知名度の高い企業やサービスの開発に関わることができる】
SESにおいてエンジニアは多様な企業に派遣されて技術を提供するため、営業活動や会社の繋がり次第で、有名企業の開発現場にアサインされる事もありえる。
有名企業や大企業といわれるような企業に入ることは簡単ではないが、SESであればそれよりははるかに高い確率で、そういった企業の開発現場に入り、その企業の実情を間近で見ることができる。
大手のやり方や雰囲気などを知ることができれば、今後のキャリアにも生かすことができる。
【最新の技術に触れることができる】
SESが他と比べてメリットのあることの1つは、開発現場が固定されずに渡り歩くが故に、逆に最新の技術に触れられる可能性もあること。
人気の自社サービスの会社への正社員としての入社であれば、その開発がどれだけ良かったとしても、他の開発に触れる機会はほとんどない。
しかしSESは一つの開発が終われば、また新しい現場へと移るので、様々な技術を経験することができる。
専門的な作業をすることから、スキルアップを目指せるのも大きなメリット。
エンジニアとしてのキャリアを高める可能性も広がる。
【残業が少ない】
SES契約は、なんらかの開発を「ここまでやる」といった成果にコミットした契約ではなく、あくまでもリソースを提供する事をコミットしているだけである。
そのため、開発が期日に間に合わなそうだからといって、何かを犠牲にしてまで追い込まなければいけない責任はSESには無く、契約の労働時間が終われば帰宅するのが基本。
休日出勤や残業は、契約事項にない限りはない。
もし残業した場合でも、労働時間に対して対価が支払われる契約のため、残業した分はそのままクライアント企業の負担となる。
労働時間が決まっている方が良いというエンジニアもいれば、残業代がつかないと給与が厳しいというエンジニアもいる。
残業が少ないことはメリットにもデメリットにもなりえるのだ。
【色々な職場を経験できる】
SESは「傭兵」と称される事もある立ち位置であり、次から次へと様々な企業・開発現場を渡り歩いてゆく。
ということはつまり、正社員のように職場や人間関係がずっと固定されてしまうことがなく、どんどんとそういった環境が変わるということになる。
環境が変わることがストレスになる人もいるかもしれないが、良かれ悪かれいずれは離れることができるので、それもSESの持つ1つの良い側面といえる。
【幅広いスキルを身につけるチャンスがある】
これまで述べてきた通り、SESは様々な現場を渡り歩く。
その中で数多くの現場に携わり、知らない業種も含めた様々な企業のノウハウやスキルに触れられるのもポイントだ。
様々な経験値を積む事は、それだけ処理できる幅が広がっていくことを意味するため、それをこなせるかどうか次第とはいえ、これはエンジニアリングに限定されない大きなメリットと言える。
③SESでエンジニアが働くデメリットとは?
【案件によって労働環境が大きく変わる】
メリットのところで書いたように、次々に渡り歩いて変わり続けるのはメリットでもあると同時に、デメリットでもある。
せっかく慣れてきた職場を離れるのはストレスになるだろう。
現場によって利用する周辺ツールなども大きく異なることもあり、似たような技術の案件であったとしても、開発環境の構築からして大きく違い、習熟から入らなければいけないようなこともある、これは明確なデメリットである。
【新しい技術を学び続けないと給料や仕事が減る】
また、SESは派遣されて仕事を行う性質上、どれだけ大きな企業で大きな仕事をしたとしても、給料をもらうのは所属企業となる。
そのため、商流という再委託による横流しの深さ次第で、収入が低くなる傾向が見られる。
また、そもそもSESは技術力がなければ、それだけ選べる仕事も少なくなるため、収入が不安定になる立場なのである。
【所属企業への帰属意識が薄くなりがち】
SESは参画している現場のある会社ではなく、実際に雇用関係にあるSESを営む会社に所属している。
そのため、自分が本当に雇用されている会社に対する所属している感覚・帰属意識が持ちづらいのも、SESのデメリットの1つである。
普段実際に働いている現場は所属企業の中ではないため、なかなか自分の会社を訪れることさえない。
それを防ぐ為に「帰社日」として、用件の有無によらず自分の所属する会社に出社する日を強制している会社もあるが、それをしなければならないくらいには、自分の会社に行く日が無いのだ。
それでは、なかなか帰属意識も持てず、自分の居場所とは感じられなくなっていってしまう。
こうした理由から、SESは仕事のモチベーションを保つことが難しいと言われている。
このようにSES契約はIT業界の独特の特殊な契約であり、メリットとデメリットが存在する。
今後のキャリアアップのためにも、エンジニアはこれらを理解しておく必要がある。
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