SES業界の人間から見た、情報戦略さんとWhiteBox

SES業界の人間から見た、情報戦略さんとWhiteBox

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とあるSES企業をやっている者です。
今回、機会をいただき、コラムを寄稿させていただく事となりました。
私なりの見方、感想を、つらつらと書かせていただければ、と思います。
よろしくお願いします。

WhiteBoxを初めて知った際の印象

WhiteBoxというものを初めて聞いた時、まぁ、色々想像しますよね。
情報戦略さんは中堅の規模の会社さんですから、そこが仕掛けてきたとなれば「どういうものだ、どうなるのだ」と、まわりはまずはじっと見定めたい、というのが本音だと思います。

このSESという業界は、とかく「多重下請け構造」とか「ゼネコン」とも言いますが、それだけ横の繋がりが強いという意味でもあり、競合他社でもありますが、協力会社でもある、独特な業界です。

そこはやはりどうしても資本主義の定めでしょうか、おカネを出す側が偉い、上の声は天の声といったような部分はどうしてもあって、つまり案件を持っている側が強いのは確かですから、エンド直案件を売りにしている情報戦略さんは、業界の中では「強い」側にあると思います。

しかも情報戦略さんはいつの頃からか、「多重下請け反対」ということで、「人を集めはするけれども人を出さない」というスタイルになったと思います。
情報戦略さんに所属するプロパー、自社の社員にとっては、これはとても良い環境でしょう。エンド直の案件があって、自社エンジニアはそこに直接入ることができます。

しかし他社から見ると、「自分は出さないけど、そっちは出して」という形でもあり、少し一方的にも見えますが・・・これは自社のエンジニアは全てきちっとアサインするだけの高い営業力があるという事でもありますし、エンド直の良案件をたくさん持っている企業では、少なくない姿です。

自社にはそんな営業力が無かったり、エンド直案件を受ける体制を作る力が無い企業にとっては、むしろ情報戦略さんの良案件は魅力的であり、だからこそパートナー企業としてやっていきたいと思う部分があります。

そんな情報戦略さんが仕掛けるWhiteBoxという新しいモノは、特に情報戦略さんと同じレベルの企業にとっては、とても興味深く、かつ警戒する対象だと思います。

スキルシートの管理ツールは秀逸

実際にWhiteBoxというサービスを拝見した際、「スキルシートの管理ツール」という側面は、とても興味深いものがありました。
各社エンジニアスキルシートはExcelで管理していると思うのですが、これがまたフォーマットが各社どころか人によってまちまちですから、自社で統一されるよう指導しなければならず、この工数も少なくはありません。

「エンジニアが自分でログインしてアップデートできるスキルシート管理ツール」というのは、きちんと使えば、とてつもない威力を発揮するものだと思います。

この機能だけで、WhiteBoxを使う価値はあるでしょう。

しかし同時に懸念することはやはり、「エンジニア情報の囲い込みではないのか」という側面です。
SES企業にとって、エンジニアは製品・サービスそのものであり、自社の最も大切な資産です。そのエンジニアの情報が他社に対して筒抜けになれば、より大きな企業に引き抜かれてしまう可能性が高くなり、これは皆が警戒することだと思います。

個人的には、小さい会社ではすごいレベルのエンジニアを満足させ続ける事は難しいものがありますので、相応に大きい会社にステップアップしていく事を止めたくはありませんし、自社が良い環境を築けていれば、そのぶん他からも集まってくるとは思います。

そういった意味では、この業界の良くない事の1つは「流動性に欠ける」という事かもしれませんが、これは日本の雇用制度の問題も絡むため、実に難しい問題です。

ただいずれにしても、エンジニアファーストで見た時、スキルシートをきちっと管理する事はエンジニア本人のキャリアプランにも関わりますので、とても大事な事だと思いますから、スキルシート管理ツールとしてのWhiteBoxは大いに期待しています。

人を出さなかった情報戦略さんが、人を出すということ

WhiteBoxサービスは、情報戦略さんの子会社である会社としてのWhiteBoxで分社化した、とお聞きしましたが、他の資本が入っていない限り、私の中ではグループとして情報戦略さんという位置付けでおります。

今回そのWhiteBoxの新しいサービスとして「案件プロモーションサービス」というものをお聞きした際、これは情報戦略さんが他の案件に人を出すことを意味するサービスですから「え?いいんですか?方針変わったのですか?」と強い衝撃を受けました。

情報戦略さんに所属するエンジニアではなくWhiteBoxに登録している企業に所属するエンジニアが応募できるとのことで、情報戦略さん自身の方向性はブレてないのかもしれませんが、下にぶら下がる企業の人を出すという事は余計に「多重下請け構造」の助長になるのではないか、と心配もしました。

しかし内容を聞いたところ、さらに衝撃を受けました。

このサービスで契約した場合、契約に情報戦略さんも、会社としてのWhiteBoxも入らない、という事だそうで。
これは業界的には、かなりの衝撃だと思います。

業界的には、契約に入るか、せめて仲介手数料をもらいます。それをしなければ、案件も人も自分のところを素通りしていくだけになりますから、仲介をしたにも関わらず何も得るものがありません。
ところが、情報戦略さんはこれをやる、という事になります。
WhiteBoxに登録している企業群というのは情報戦略さんのビジネスパートナー群でしょうから、これらを、よそのSIer企業に無償で公開するようなものです。

正確にはプロモーションサービスは月額らしいですが、月に5万円・・ですか?
SES業界の人ほど、また一定以上のレベルのSIer企業ほど、これがどれほど破格な事なのか、驚愕すると思います。

なるほど確かに、契約にも入らず仲介手数料も取らなければ、それは中抜きでは全くありませんので、多重下請け構造の助長にはなっていません。
しかしそれはつまり情報戦略さんが自分の利益をみすみす失う事になりますので、「本気ですか?」という感想を抱きます。

でも、それを押してまでこの問題に本気で取り組む、WhiteBoxを業界にとって便利なサービスにする、という情報戦略さんの強い意志を感じました。
私はこの英断には、惜しみない拍手を送りたいと思います。

多重下請け構造の向こう側へ行くための原動力

多重下請け構造がこれだけ言われている中で何故変わらないかと言えば、そこに関わる各社にとっては、そこに利益があるから、だと思います。
会社として動く以上、利益を追い求めるのはある意味当然の部分があり、エンジニアに良い待遇を準備することもまた、得られる利益があってこそ、です。

ここがなにか社長個人が私利私欲でただ1人儲けていて、他の人たちは搾取されるばかり・・・みたいな分かりやすい悪の構造であれば、分かりやすいのですが。
実際にはそんなアニメ的なことはなく、自社に所属するエンジニアの待遇を少しでも良くする、その為に目の前で少しでも高い利益を追う、そんな活動をしている企業も少なくないと思います。

ですから、綺麗事だけ並べても、「余裕のある会社はいいですね」となるだけであり、業界は変わりません。
下から見れば「どこがより利益を持っていくか」の形が変わるだけであれば、どこか他人事でもありますし、結局のところは同じになるだけです。

しかし今回お聞きしたWhiteBoxの新しいサービスは、情報戦略さんの利益を損ねかねないものです。
ある意味では、利己ではなく利他の精神ですから、これは綺麗事だけ並べるのとは違う、業界を変えうるものになるのではないでしょうか。

最近では「引き際に 利己で会社を潰すアホ社長 利他で会社を継ぐデキる社長」なんていう本も出版されて話題と聞きます。笑

情報戦略さんの利他の精神が、多重下請け構造の向こう側へ行く原動力になるかどうか。
今後をとても楽しみにしています。

 

(※編集部注:本コラムは執筆者の個人の考えによるものです。当サイト・運営会社の見解ではありませんので、予めご了承ください。)

 

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