You are currently viewing エンジニアスキルシートの正しい盛り方

エンジニアスキルシートの正しい盛り方

SI業界で働くエンジニアにとって、欠かせない存在であるスキルシート。

え?スキルシートなんて使わないよ作ったことないよ、というSI業界のエンジニアの方は、それはご自身の知り合いの関係であったり、所属する企業の営業による力によって仕事を得ているだけだったりします。

現状は不自由のない仕事を出来ていたとしても、より正しく評価されて単価を上げていったり、あるいは状況が変わった(知り合いの仕事が終了する、所属する企業を退職する)としても影響がないようにするためには、頼れるのはあなた自身をあらわすキャリアを通したスキルシートなのです。

そもそもスキルシートってなんだろう?

スキルシートとは何か、それを端的に言ってしまえば、一般的なところでいう「職務経歴書」です。
これまでにどんな仕事をしてきたか、それが記載されています。

一般的な職務経歴書とどこが最も違うかというと、「利用したツールや、言語のバージョンなどが記載されていること」ですね。これらの情報はシステム開発においてとても重要なもので、過去に利用したことのあるツールであれば新しい現場でも馴染むのが早いですし、言語のバージョンも同じであれば心配ありません。

しかしこのスキルシートというものはフォーマットが人によって会社によって千差万別ですので、かなり様々な種類があります。
中には、過去の経歴はほとんど記載せず、「何がどのくらい出来るか」という「スキルシート」という名前で想像する姿そのままの様式のこともあります。

その場合、例えばこのような形になっています。

——–
Java ☆☆☆
C++ ☆☆
COBOL ☆☆☆☆☆
MySQL ☆☆
——–

こういったフォーマットが、過去の経歴と併記してあるようなスキルシートもあります。
確かにこのまさにスキルを記載した様式は「何がどのくらい出来るか」という情報がパッと分かりやすい反面、実は「実際にそのくらいのレベルなのか」という点が逆に分かりにくい、信用性の問題があります。

つまり、このスキルを記載する様式のスキルシートは、あくまでも「その基準が信頼できるものである」という前提があって初めて成り立つものですから、例えばSI企業がとても信頼のおける企業で、そこの営業さんがチェックしたスキル記載であれば信用ができる・・・といったような場合だけです。

裏を返せば、そのフォーマットとしての信用性が無ければ意味が無いと言っても過言ではなく、信頼されているSI企業から退職したフリーランスエンジニアの方が、まったく同じスキルシートを持って新しい仕事を請けようとしても、知らない人から見れば「スキルではこう書いてあるけれども実際にそれが出来るか判断できない」となってしまいます。

そのため、知らない人が見ても判断できるスキルシートのポイントは必ず、それまでにどのような仕事をしてきたか、という経歴の部分となります。

実力が高い人ほどおろそかにしがちなスキルシート

これはとてもよく目にする姿なのですが、とても長いしっかりとした経歴があり、実力も高いであろうエンジニアの方ほど、スキルシートは雑なものであったりします。
記載は極めて簡素、プロジェクトの説明はほぼ一文のみで、言語やツールもごく最低限の記載しかありません。

そういう方にとっては、既に築き上げてきた実績と自負があるでしょうから「こんなもの必要ない」という感覚もあるかもしれませんし、事実、そのスタイルでこれまでずっとキャリアを築いてきていると言えます。

しかしこのパターンのエンジニアの方には、2つの問題があります。

まず1つめの問題は、「これまでやってきた事と同じ事しかまわってこず、スキルアップできなくなる」という事です。

「別にもう上げる必要がない」「今のままの仕事をずっと続けられればいい」という意見であれば、それはひとりひとりの生き方の問題で、ここで口を挟むことでもありません。

しかし忘れないでいただきたいのは、システム開発の現場、ITの世界というものは日進月歩、常に進化して変わり続けるものですし、そのスピードもかなり速いものです。
物価が上がり続ける中で、タンス貯金を続けていると実はそのお金は少しずつ失っている・・・という構図と同じで、常に進化して変わり続ける中で「現状を維持する」という行為は、実は相対的には下降している事を意味します。

ですから、「現状維持」というのが「報酬が下がってでも今やっている事と同じ事を続ける」という意味なら良いですが、「報酬を維持したい」という意味での現状維持であるならば、知識が現状維持ではまずい、という事です。

スキルシートへの記載が多ければ多いだけ、例えば過去のプロジェクトで少しだけ触った言語やツールなどあった場合、それだけのキャリアのエンジニアであれば、その少しだけ触ったものを更に深掘りする事も、それほど難しくはない事も多いです。
ところがこういった細かい記載が一切無いと、あくまでもそれまでのキャリアの本筋である1つのスキルだけでしか仕事が来ませんので、経歴も能力もどんどんそれ1本だけになってしまう、というのはよくある姿です。

持っている実力を考えればもっと評価が上がってもおかしくないのに、とてももったいない事だと言えます。

もう1つの問題は、そのSI企業に依存しがちになる、という事です。
「これまでのパターン通り」の仕事というのは、当然積み上げてきたものがある以上は評価も高いですが、ひとたびそこを離れれば、とても扱い辛いものになってしまいます。

分かりやすい表現をすれば「潰しが効かない」ので、特定の同じSI企業でしか報酬を維持できず、フリーランスになると報酬が大きく目減りしてしまう・・・そんなパターンもあります。

実力がある、実績があるからこそ、スキルシートはとても重要なのです。
面倒でもなるべく多くの情報を記載することが、必ずそのエンジニアの方自身の為になります。
実績があるという意味では経歴を並べる事はたやすいですから、そこは面倒がらずに書いてください。過去のプロジェクトは一度書いてしまえば終わりで、以後ずっと使えますので。

経歴の乏しい人はどう盛ればいいのか

逆に経歴がそれほど多くなく、書くことが少ない人はどうやってスキルシートをより良くすればいいのか。盛ればいいのか。
表題のこの問題を、ここからご説明します。

まず、経歴が乏しい人が陥りがちな最も危険なもの、それは「経歴詐称」です。
ここで言う「経歴を盛る」とは、より良く見せる、しょぼく見えなくするという事を意味するだけであって、「経歴詐称」とは根本的に違います。

どうなれば「経歴詐称」にあたるかと端的に言えば「嘘をつくこと」であり、「やっていないことをやったと書くこと」になります。

とてもよく見かける例で、自分はテスターとして参加して、決められた手順に従って決められた行動をしてテストをしただけなのに、そのテストをした対象になったプログラムを全てさも自分が作ったかのように書いたり、利用したものとして言語やツールを全て並べる、などがあります。

こういったもはや詐称レベルのスキルシートは、確かに見栄えはとても良くなるかもしれませんが、そういった「やりすぎた」スキルシートは見る人によって簡単に分かるものですし、分からなければ逆に非劇が起きます。

詐称レベルスキルシートによって高単価を手にしても、それによって高すぎる期待の目で見られ、出来る事が当たり前と思われている現場に入って、実際には出来ないのですから、まわりの目の冷たさも尋常ではなく、孤立無援、とても苦しい仕事をする事になります。

また、そういった詐称レベルのエンジニアが入ってくれば、本来任せるはずだった仕事が任せられずに他の人にまわってしまいますので、現場全体が極めて不幸になってしまいます。
こういう事をさせる営業担当者がいるSI企業は間違いなくブラックですから、すぐに他の企業への転職を考えましょう。業界全体がそんなにひどいわけではありません。

そういう悲劇しか招かない詐称レベルにならずに、経歴を「盛る」にはどうするか。

身も蓋も無いかもしれませんが、やった事だけを純粋に書き、それで足りなければ「やる事を増やすこと」です。
とはいえ経歴の浅い人にとっては仕事は増えません。
その場合、ぜひ「趣味」として色々なことをやりましょう。

よく分かったSI企業の場合、研修で様々なことを体験させます。これと同じように、趣味で自分の好きな何かをやる、その時に仕事でよく使われがちな言語やフレームワークに触れておく事で、スキルシート上にもその情報が乗りますから見た人にも響きやすくなり、実際問題触れておけば、仕事でやることになっても違和感が無いわけです。

「スキルシートに趣味のプログラミングをのせていいのだろうか?」と悩む人もいるかもしれませんが、「乏しい経歴でやってもいない事を盛るよりは遥かに印象が良い」と言えると思います。

ただし趣味としてでも実際にやる以上は、それなりの努力と時間が必要です。
それを抜きにしてスキルシートを盛りたいという方は、せいぜい粒度を高める、やったことを細かく書くしかありませんが、「努力してないけど立派に見せたい」ということ自体が、既に詐称の考え方と言えます。

ですから是非、趣味としてのプログラミングも何かプロジェクトを作り、それをスキルシートに乗せてください。

見る人によってスキルシートの印象はバラバラ

最後にご説明したいのは、どれほど良いスキルシートを作ったとしても、それを読む人によっては全く響かない事もある、という事です。

これは人事系の採用にも言えるかもしれませんが、見る側の人間にスキルも知識も全く無かった場合、見られるわけもありません。
そういう人はえてして過去の経歴の知名度であったり、純粋な経験年数などで判断しますから、正しいとは言い難いものがあります。

でも、正しい判断ができない人が採用を握っている現場は、ろくでもない確率もまた高いものです。
良い判断して参画してきたエンジニアが実際には詐称まがいであったり、悲惨なデスマーチになる可能性が高まるばかりですから、そのような「違いの分からない採用者」に選ばれなかったとしても、実はそのおかげでむしろ不幸にならずに済むかもしれません。

「違いの分かる人に、きちんと分かってもらえる」そのためのスキルシート。
これをきちんと持てば、きっとその人にとって最も最適な現場に入ることができ、その結果として幸せにもなれると思うのです。

幸せになるために、「正しく盛った」充実したスキルシートを。
エンジニアの方は、いますぐ自分のスキルシートを見返してみてください。

 

(※編集部注:本コラムは執筆者の個人の考えによるものです。当サイト・運営会社の見解ではありませんので、予めご了承ください。)

 

▼編集部便り

 

本コラムは、SES業界に関連した事項を中心に、いろいろな方の見解を掲載しております。現在、本編集部ではコラムを寄稿してくださる方を募集中です。お問い合わせフォームよりご連絡ください。