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本当にあった(システム開発の)怖い話

私はシステム開発会社に勤めています。システムエンジニアではなく、営業や事業開発をするビジネス全般の仕事をしており、仕事柄、中小企業の経営者との関わりが多く、またシステム開発企業なので、ITやDX、システムに関わる相談を受けることが最近多くなってきました。

そんな中、コロナ禍の今年春、こんな怖い(システム開発の)話があったのです。

動かないWebシステム

コロナ禍でリモートワークが殆どになっていた5月のある日、私は久しぶりの出社で、午前は書類の処理、午後は来客とWeb会議の対応をしていました。

夕方18時を過ぎ、残務をこなして帰ろうかと思っていた時でした。
以前仕事で少しかかわったことのある老舗企業の代表から、久しぶりに連絡があったのです。
「新規事業でWebシステムを自社開発したんだけど、ちゃんと出来てるのに機能しないんだ。どこがおかしいか見てもらえない?」

まず私が思ったことは「(それは有償ですか、無償ですか)」という点でしたが、以前お仕事したときにお世話になっているし、年齢的にも上の方なので、「(とりあえず一回見る程度なら良いか)」と割り切って依頼を受けることにしました。

とはいえ、「(バックエンドの難しい話されても、エンジニアでもない私がアドバイスできるだろうか)」という一抹の不安はあったため、「エンジニアじゃないので、良いアドバイスできなかったらすみません!」と保険を掛けた上で、翌日に一度Web会議で打ち合わせをすることになったのです。

システム開発とは・・・

翌日・・・、Web会議の招待が来ないので、こちらからZoomを発行して招待すると、「ありがとう!」と軽―いお返事が・・・。不安は募るばかり・・・。

そして打ち合わせの時間・・・、Zoomに入ってきたのは若手1名のみで、代表と部長の方が未だ入ってこられず、3分ほど遅れて2名が参加。お忙しかったのかなと思いきや、「Web会議とかあまり使わないから入り方良くわからなくて!」と・・・不安は深まっていきます。

久しぶりということもあり、10分ほど近況報告や雑談をした後、早速内容をお伺いすることになり、やろうと思っている新規事業の内容までは理解できたものの、システム開発の話に入り始めた途端、代表の説明がなかなか要点を捉えず理解できない・・・。
そこで私から「一旦見てみたいので、(若手)さん画面共有で開発した内容見せてもらえますか?」とご提案し、見せていただくことに。

(ここからは会話形式でお楽しみください・・・)
若手「はい、今共有しますね」
代表「彼、大学時代にWebサイト作ったりしてて結構デキるんだよ!」
私 「(ぉぉぉ、不安だ・・・)そうなんですねー・・・」
若手「はい!映ってますか?こちらになります!」
私 「はい、見えてます!」
代表「ね?結構いい感じに出来てるでしょ?彼1人でやったんだよ!」
私 「へー、すごいですね。どのくらいで作ったんですか?」
若手「結構残業もして1カ月くらいで作りました!」
私 「・・・バックエンドもお一人で?」
若手「バックエンド・・・?」
部長「無知ですみません。バックエンドというのは何でしょう?」
私 「えーっと、画面上入力された内容を実行するプログラムとか、それを保存するデータベースとか・・・」
代表「え・・・?これ以外にもいるの・・・?」
(以上で会話形式終了・・・)

・・・ということで、HTMLとCSSしか存在しないシステムだったのです。
私自身はエンジニアでもないし、お金をもらってるわけでもないので、何処まで説明するかは悩みつつも、できる限りの内容はまとめて、ご説明しました。

この打ち合わせ終了のころには、「デキる」と言われていた若手がやや責められる形になっていたので、そこは確りとお伝えしました。
彼は全く悪くなく、エンジニアでもない人が「Webサイト作って!」と言われたら、こうなるのは至極当然なわけです。

コトの顛末は

このお会社さんは、老舗のアパレルブランドなのですが、とある会議で「これはこの業界全社が欲しいよね!新規事業として面白いんじゃない?」となり、老舗ということもあり、ITに詳しい人がいなかった中で、部長が「(若手)くん、大学でWebサイト作ってたって言ってたよね!」という流れで、若手が1人で作ることになったのが、ことの発端だったそうです。

その後出来上がった画面を見て代表もご満悦だったものの「あれ?画面は完ぺきなのに動かないぞ?」となり、以前システム開発関連でお仕事したことのある私に連絡することになったのです。

私との打ち合わせの直後に、「ちなみにバックエンドを作るには、期間と費用はどのくらいかかる?」と聞かれたので、「ちゃんと工数見積もらないとわかりませんが、費用は想定しているコストの1桁上くらいだと思いますよ!」とお伝えし、結果的には断念したそうです・・・。(もちろん、もっと色々話してますが、抜粋してます)

さいごに

今の日本は、国策としてDXを推進したり、コロナの影響でリモートワークが主流になったり、フリーランスエンジニアと呼ばれる人が増加したり、一見はITに対する知見が広まっているように見えていますが、IT業界外、特に国や教育機関、保育や介護、医療の業界においては、実はまだまだ旧態依然としています。

例えば、小学校教諭を務める友人が「俺、ICTの担当として学校のICT化進めてるんだ」と言っていたので、「どんなことしてるの?」と聞くと「各クラスに〇台タブレットを配布したんだよ」と。「それでどんなことをしてるの?」と聞くと、「タブレットのカメラで植物や動物の写真を撮って観察したり、タブレットで書籍を読ませたりしてるんだ」と。
これはICT化というのだろうか・・・。

今回の怖い話も良い例です。
システム開発に関わったことが無い人からすれば、目に見えるもの(画面)がすべてで、その裏に複雑な処理が走っていること、データーベースは情報保存だけでなく、アクセス集中の対応とかの複雑な処理もしないといけないこと・・・等々、そんなことは知る由もないわけです。

システム開発やITに明るくない人は、自分が思っているよりも、遥かにそれ以上にわかっていないということを理解しなければならないし、エンジニアやITがわかる人は、その他の人が、思っている以上にわかっていないことを理解した上で接していかなければなりません。
常に相互理解し、確りと日本のITを進めていかなければならないと、痛感する出来事でした。



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