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「フリーランス」ってナニ?

近年、厚生労働省が「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を策定するなど、「フリーランス」という働き方に、国ぐるみでフォーカスが当てられています。
特に、エンジニアという職種については、従来からあったSESという形態の延長線上として、フリーランスになりやすい職種とされています。

しかし、SNSやメディアによる情報発信の中には、間違った考え方や、極一部で起きている事象を、さも全てのフリーランスに起きているかのように発信する等、間違った形でのフリーランス普及活動が行われています。

そこで、「そもそもフリーランスってナニ?」「何がメリットで何がデメリットなの?」「あの情報ってホント?」といった観点に合わせて、説明していきたいと思います。

「フリーランス」ってナニ?

「フリーランス」の定義

「フリーランス」とは、企業等の組織や団体に所属せず、個人で仕事を受ける働き方をしている方を指します。依頼毎に求められる技術やコンテンツを提供し、その対価として報酬を受け取る形態です。

尚、日本で以前から使われていた「フリーター」という言葉がありますが、「フリーター」は、正社員などではない、非正規雇用の形態で生計を立てている人を指す言葉で、フリーランスとの大きな違いは、雇用契約の有無です。

一般的に、フリーランスは高度な専門知識を有する人がなることが多く、そのため報酬も高いことが多いですが、フリーターは専門知識等が無くても行える仕事が多いため、国で定められた最低賃金に比較的近い水準での報酬設定となっていることが多いです。
逆に言えば、専門知識が乏しく報酬も高くないフリーランスとフリーターとの差は、雇用契約の有無のみといっても良いでしょう。

フリーランスの報酬

会社員の場合、毎月固定の時期にある程度の決まった収入を会社が保証してくれますし、アルバイト等を含むフリーターという働き方についても、労働時間等の予め定められた内容に合わせて確定した収入が、定められた時期に会社から支払われます。また、国に治める税金等も、会社の方で計算し、代わりに収めてくれることが殆どです。

一方で、フリーランスの報酬は案件によって決まり、またその報酬がいつ支払われるかについてもまちまちです。また、国に治める税金等については、毎年決められた時期に自ら計算して納める必要があります。(最近はクラウド会計ソフトの利用等で簡単にはなってきています)

フリーランスと個人事業主の違い

上述の通り、フリーランスは、雇用関係を持たずに個人で仕事を受ける働き方をしている方の呼称です。これに対して、個人事業主は指定の税務署に開業届を提出し「税務上の区分」として、個人事業を営む方を指します。

働き方を尋ねられた場合、個人事業主もフリーランスといえますが、税務上では「開業届を提出しているかどうか」で区分されます。また、フリーランスには法人化している個人も含みますが、個人事業主は「事業を反復継続している個人」を表すため、法人は対象外です。

また、会社員は基本的に収入そのものによって収める税金の金額が決まるのに対し、個人事業主として届け出ている、もしくは法人化しているフリーランスの方は、報酬の内から、業務遂行に必要な費用を経費として減算し、最終的な利益額に税金が課せられるため、税制に詳しい方が上手に活用することで、節税につながるといったお得ポイントがあります。


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フリーランスのメリット・デメリット

フリーランスと会社員の違い(制度面)~制度面はデメリットばかり~

主な制度面での違いは下記の通りです。

このように比較してみると、フリーランスの保障が、会社員と比較して少ないことが良くわかるでしょう。
この辺りを理解せず、勢いでフリーランスになると痛い目を見るので、しっかり理解しましょう。

会社員は一般的に、「健康保険」「厚生年金」「雇用保険」「労災保険」の4つの社会保険に加入しており、「怪我や病気で働けなくなった」「失業した」「出産のために休業した」といった場合でも、いきなり収入が途絶えることはなく、定められた期間、手当金が支給されます。また、健康保険・厚生年金・雇用保険の保険料は、会社が半分負担し、労災保険に至っては、会社が全額負担してくれているのです。
(知らない人も多いので、あえて全てしっかり書きました)

一方で、フリーランスの方の場合、加入が義務付けられているのは「国民健康保険」と「国民年金」のみ。保険料は全額自己負担です。会社員のような保障はありませんので、職種によっては、働けなくなった時点で即収入が途絶えてしまう可能性があります。

もちろん、会社員の社会保険の代わりに、「就業不能保険」等の民間の保険への加入は可能ですが、会社員時代と違い全額自己負担です。
収入アップのためにフリーランスになったのに、気付いたら会社員時代よりも手元資金が減っている・・・なんてことにならないように、しっかり理解しておきましょう。

フリーランスと会社員の違い(その他)~良くも悪くも全て自己責任~

その他のメリット・デメリットをまとめてみました。

まず、フリーランスのメリットとして確実に言えることは、「自分のペースで働ける」ということでしょう。会社員と異なり、自身で働き方を選ぶことができますので、1日の労働時間や1週間の休日の数、休日を取る曜日まで、自身で決めて選ぶことができます。
ただし、もちろんその希望沿う案件があるか、もしくはクライアントが合わせてくれない限り、自由に働けるわけではないので、そこは「条件付き」です。

そして、次に良く挙がるメリットは「高収入が狙える」というところでしょう。
会社員の場合は賃金体系が決まっていますので、自身の単価と実際の収入は一致しないものです。例えば会社は100万円で仕事を受注しても、本人には30~50万円程度しか支給されないことが殆どでしょう。しかし、フリーランスならば100万円の仕事を受けることができれば、100万円が手元に入ります。
もちろん会社員とフリーランスでは、単価の設定方法が異なります。また、会社では様々な間接費が掛かり、且つ保障の観点でも、単価が高額になるのは当然の認識なのです。
しかし、言い換えると全てを自分でできれば、会社で受注するような単価で案件を受注できる可能性はあり、結果的に高収入が狙えるようになります。

一方で、デメリットとして確実に言えることは、「事務作業が多い」ということでしょう。
フリーランスは自身で全ての仕事をしますので、契約や請求等の事務作業、確定申告等も全て対応しなければなりません。また、自身が参画する案件を探して交渉するといった営業活動もすることになります。
尚、最近はフリーランスの事務作業をアウトソーシングで引き受けてくれるサービスがありますので、これらのサービスを活用すると事務作業が多いというデメリットを小さくできますが、その分費用はかかりますので、結果メリットを削りかねないことは理解しておくべきでしょう。

そして、次に挙がるデメリットが、「収入が安定しない」といった点です。
会社員と異なり、自身で案件を継続的に受注しない限り、安定した収入を得ることができません。ほとんどの契約が、契約解除の告知が1カ月前等となりますので、急に1カ月先の仕事を失うことがあります。
特に東日本大震災や新型コロナウイルスなど世の中に大きく影響するような事態が起きてしまうと、フリーランスの収入は一気に不安定となってしまいます。
その観点から、直近の年収が高かったとしても、社会的信用が低く見られてしまうことがあり、ローンやカードの審査が通らないといった理由にもなりますので、理解が必要です。

会社員は、収入の安定(社会的信用の高さ)や福利厚生によるメリットがある一方で、上司次第では残業が多く帰れない、プレッシャーが強くてパフォーマンスが発揮できないといった、周辺環境によるデメリットがあります。
これらのメリット・デメリットを天秤にかけ、自身がどうあるべきかを考えることが、より良い選択に導くことに繋がるでしょう。

フリーランスの「あの情報ってホント?」

「上手く節税すると0円になるからフリーランスの方が会社員より得」ってホント?

殆どの場合がウソです(筆者の個人的な判断であることを、明確に書き記しておきます)。
※ただし、生活に困るレベルの収入の場合はあり得ます。

(ここでは法人化したフリーランスについてはあえて触れません)
まず、個人事業主が納める代表的な税金は、①所得税、②住民税、③個人事業税、④消費税、の4つです。

所得税と住民税が0円になるケースは、以下の3つです。
・赤字の場合
・前3年の赤字の繰り越しがある場合(青色申告)
・所得金額よりも、所得控除が多い場合
赤字については、費用が売上を上回っている場合で、「法人」と異なり、支出のない費用が多くない「個人事業主」の場合、貯蓄を切り崩してまで仕事をしていることになることが殆どですので、通常あり得ません。
つまり、まともに稼げていれば、殆どの場合起こりえないのですが、「色々と費用扱いできるから節税できるよ」と裏から手を引かれることがあります・・・。これは、「節税」ではなく「脱税」なので、絶対にやめましょう。

次に、消費税が0円になるケースは、下記の2つです。
・前々年の課税売上高が1,000万円以下、且つ前年の1月1日から6月30日までの課税売上高または給与等支払額の合計額が1,000万円以下である場合
・売上に係る消費税よりも、経費にかかる消費税が多い場合
後者は、仕事に関わる大きな資産の購入でもない限りは、赤字確定なので、殆どないと思いますが、全社は良くあることですので、消費税が面前されることはあるでしょう。

最後に、個人事業税が0円になるケースは、下記の3つです。
・事業所得が290万円以下の場合
・前3年の赤字繰り越しがある場合(青色申告)
・法定業種以外の業種の場合
上2つは、所得税・住民税の話とほぼ同様ですので省略します。
個人事業税は、定められた業種(法定業種)のみに課される税金です。
例えば、文筆業や翻訳業、ミュージシャンやスポーツ選手等は、法定業種ではありません。ただし、法定業種は自治体によって異なる場合もあるので、注意が必要です。

つまり、所得税・住民税の内容を鑑みると、まともに儲かっている個人事業主であれば、特別な理由がない限り、納める税金が0円になることは起こりえないでしょう。

さいごに

「年収が上がるらしい」「自由気ままに働ける」等のメリットだけを信じて、勢いだけで会社を辞めてフリーランスになる人は、バカを見ます。
国も働き方改革を推進し、合わせてフリーランス支援の施策も行っていますが、大事なところの理解を疎かにしています。
最後の「あの情報ってホント?」の章、今回のコラムでは、1つの話題しか取り上げてませんが、今後も気になる噂を目にしましたら、筆を取ろうと思います。とにかくネット上には間違った情報が多く、それを信じてしまう方が多いので、しっかり内容を理解していただきたいのです。

また、企業側からすると、いつでも契約解除可能な業務委託のフリーランスは使い勝手が良く、一昔前なら何らかの雇用契約形態で採用していた職種の枠に、フリーランスを採用し、企業の都合で急な契約解除も厭いません。
だからこそ、社会には低単価なフリーランス向け案件が増え、「雇用契約のないフリーター」で溢れています。

この新型コロナウィルスの騒動で職を失って困ったフリーランスの方は多くいらっしゃることでしょう。
「フリーランスとは何か」をしっかり理解した上で、後悔のない判断をしていただきたいものです。

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(※編集部注:本コラムは執筆者の個人の考えによるものです。当サイト・運営会社の見解ではありませんので、予めご了承ください。)


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